【短歌】鈴木晴香『心がめあて』を読んでみた【歌集レビュー】

短歌

こんにちは、taicchanです。

2021年春より短歌を始めたビギナー歌人です。
ずっと「定型を守る」ことだけを意識して1年間約750首の短歌を作ってきました。

この記事では、そんなビギナー歌人のtaicchanが読んだ歌集のレビューを行っていきます。

同じように短歌を始めたばかりの方、またずっと歌集に触れる機会のなかった方にとって、さらに短歌を楽しむきっかけになってくれたら嬉しいです。

 



歌人・鈴木晴香さんと歌集『心がめあて』について

歌集『心がめあて』は、歌人・鈴木晴香さんの第2歌集です。

奥付のプロフィールを引用すると、

1982年東京生まれ。歌人。慶應義塾大学文学部卒業。雑誌「ダ・ヴィンチ」『短歌ください』への投稿をきっかけに作歌を始める。第1歌集『夜にあやまってくれ』(書肆侃侃房)。2019年パリ短歌イベント短歌賞にて在フランス日本国大使館賞受賞。塔短歌会編集委員。京都大学芸術と科学リエゾンライトユニット、『西瓜』所属。
とのこと。
僕taicchanも1980年代生まれなので、同年代の歌人の方になります。

2019年パリ短歌イベント短歌賞にて在フランス日本国大使館賞受賞という、文字からしてドカンとくる業績は、2020年まで活動のあったパリ短歌クラブというフランスでの短歌コミュニティが主導となっていたイベントのようです。

僕自身には、鈴木さんの歌集としては初めての一冊になったのがこの『心がめあて』。

購入のきっかけは、以前歌集を一挙に買った際の一冊だったことです。

『心がめあて』は3つあった購入理由の中で、一番に置いていた「平積みされている歌集」だったからです。

おそらくは鈴木さんを描いたであろう、独特の装丁が棚の中段で正面を向くように平積まれ、まるでこちらを見つめてきているようでした。

また、帯には文芸に精通している芸人さんとして有名な、ピース又吉さんの推薦文。

平積み&有名人の推薦というおすすめ二段構えというのは、「餃子の王将」がうちの看板メニューは餃子だと言っているようなものです(謎)
この一冊は間違いなさそうだと感じ、手を伸ばしました。

共感とオリジナルのギリギリのラインをつく歌の数々

読むにあたり、ポストイットを用意しました。

鉛筆を使って気になった歌に丸をつけていくのもいいかと思ったのですが、読み返した時に気が変わって、消したり書き直したりしたらページが汚くなるので嫌だなあと感じ、気になったところをマーキングする方法としてポストイットを選びました。

購入したポストイットはシグナルカラーの3色プラのものだったのですが、見出しにも書いたように共感とオリジナルのギリギリのラインをつく歌の数々に、60枚あったはずのポストイットは残り10枚ほどになってしまいました。

すごく共感できるんだけど、真似できないなあと思った歌には例えば、

ライターのどこかに炎は隠されて君は何回でも見つけ出す

君は手の銀貨を天然水に変えその水はすぐ人間になる

老人の漕ぐ自転車が歩くよりはるかに遅いのに倒れない
言われてみるとそうなんだよねという情景も、描かれ方が独特で真似が効きません。
こういう歌、作れるようになりたいなあと強く感じました。

あるいは、読まれて初めて「そういう感覚あるかも」と意識していなかった世界を意識するようになった歌もありました。

桜花コンクリートに溶けてゆくひとひらにひとひらのまぼろし

見えなくてそれでもそこにあるものを探しに夜の地平線まで

腕時計外せばわずかに白い肌見えて本当のことを言おうか
肝心のところを読者に委ねつつ、ピントが合っていないかというとちゃんと情景が描かれている。
補助線となる情景描写の引き方が絶妙だなと感じました。

ピース又吉さんが帯に「掴めないはずの感覚を捉えた瞬間の心地よさ」という文を寄せていますが、まさにそのものズバリ。

初めて読んだ歌集100%

僕にとって、『心がめあて』は人生で初めて徹頭徹尾を読みきった純度100%の歌集になりました。

(以前、穂村弘さんと東直子さんの共著『回転ドアは、順番に』を読んだことがあったのですが、あれは歌集であり、そして連作短編小説でもあるように思います)

自分が1年間行ってきたことが三十一文字の中に文字を嵌め込んでいくことだったというのを痛感させられた、「これが短歌か」と実感させられた一冊になりました。

読者を信頼して、世界を表現し切ること。
読者を信頼して、世界の一番大事な部分を委ねること。

その二つをやり切るとどんなものが出来上がるのか、『心がめあて』で学ばせていただきました。

文芸作品は、さまざまな性格を持っています。

  • 心を強く動かし、感動させるもの。
  • 隠していたかったものを暴き出し、本性を抉り出すもの。
  • 寄り添い、心を支えてくれる暖かなもの。

鈴木さんの『心がめあて』は、「ああ、そうだった。僕らのいる現実って、そうだよ」と膝を打たせてくれて、そしてその奥にあるものが何なのかを問いかけてくれるような一冊でした。

この歌集が、僕が歌人として初めて読んだ一冊であったことを、とても幸せに思います。

 

にほんブログ村 ポエムブログ 短歌へ
にほんブログ村

 

👆ワンクリックが励みになります。よろしくお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました